ぷち解説
衣裳
伽羅先代萩
主な登場人物
   解説
    仙台伊達藩で繰り広げられた家督相続争い、所謂「伊達騒動」を題材にした作品です。天明五年(1785)正月、江戸結城座で初演された九段続きの時代ものですが、現在専ら上演されるのは六段目の「竹の間」「御殿」「政岡忠義」「床下」で、時代設定を鎌倉にとり、伊達家を奥州藤原家に書き替えています。
   
   「竹の間の段」までのあらすじ
   
   これまでにどんなことがあったかというと・・・
   
    奥州54郡の太守義綱は傾城高尾に溺れ国政を顧みないことから、隠居させられ幼君鶴喜代が家督を相続します。しかし、後見役に就いた錦戸刑部らはお家横領のため、その幼君を亡きものにしようとしています。このため乳人政岡は暗殺を警戒、病気と称して、食事も自ら炊いたものだけを供するほど厳重に護っています。
       独立行政法人日本芸術文化振興会発行 第117回=平成221月文楽公演番付より抜粋
   
   「床下の段」後の物語は・・・
   伊達家の系図の一巻が奪い去られた「床下の段」で六段目が終わります。さてその後は・・。
   
   〔第七〕(明衡屋敷)伊達家の重臣伊達次郎明衡のところへ京都から上使として羽根川丹下がきて、領地の事から紛糾する。それに明衡の子千賀之助と定倉の娘文字摺との恋がからむ。

〔第八〕(定倉屋敷)衣川にある和泉小治郎定倉の邸では庭に萩を植え、先君の愛された花だというので先代萩と名づけ酒をくむ(先代萩の名題はここに由来する)。定倉も明衡も忠誠において変わることがないのを知って息子と娘の婚儀をゆるす。明衡はいっさいの騒動を解決するため鎌倉におもむく決心をする。

〔第九〕(対決)明衡の訴えによって幕府では梶原景時と畠山重忠とを立会人として、貝田勘解由との対決がなされた。常陸之助国雄の幻術のために外記左衛門は落命するが、結局一味の罪状が明白となり、松ヶ枝節之助は貝田を殺し、錦戸形部は遠流の刑に処せられ、めでたく鶴喜代君の栄えゆく御代となる。

   (国立劇場上演資料集/国立劇場芸能調査室編146「全編の梗概と解説『伽羅先代萩』河竹繁俊」より抜粋)
   
 
 
参考   「伽羅先代萩」名題を同じくする文楽と歌舞伎の主な役名対比
 浄瑠璃 歌舞伎脚本  モデルとなった史実上の人物 
 伊達義綱  足利頼兼  伊達綱宗
 乳人政岡  乳人政岡  亀千代君生母 三沢初子
 鶴喜代君  鶴千代君  亀千代君(後の伊達綱村)
 千松  千松  
 八汐  八汐  
 貝田勘解由  仁木弾正  原田甲斐
 松ヶ枝節之助  荒獅子男之助  
 伊達明衡  渡辺外記左衛門  伊達安芸
 畠山重忠  細川勝元  板倉重矩
 錦戸形部  大江鬼貫  伊達兵部
 梶原景時  山名宗全  酒井忠清
  (国立劇場上演資料集400・477他を参考として作成) 
   
  『伽羅先代萩』ゆかりの地巡り は こちら 

新版歌祭文

「野崎村の段」までのあらすじ
 油屋の娘お染と丁稚久松は主従の関係を越えて道ならぬ恋に落ちています。お染の母で店の女主人であるお勝は、お染に惚れる質屋と結納まで交わしているのですが、この恋を貫こうとするお染には、親のいいなりになる気は毛頭ありませんでした。  久松は、店の手代小助の悪だくみによって、集金したお店の金を横領した疑いをかけられてしまいましたが、お勝のはからいで、真相がはっきりするまで実家に帰されることになりました。
                                          (日本芸術文化振興会発行 第73回=平成11年1月文楽公演番付より抜粋)
お染久松ふたりのその後は・・・
  お染の母お勝は、娘の心がわかっていながらも、久松を思い切りすでに結納を交わした佐四郎と結婚するようにと、娘を拝みます。お染は親の手前承諾はしましたが、死ぬ決心は変わりませんでした。  その頃、やはり死を決意しお染に別れを告げに戻った久松がふとしたことで蔵に閉じ込められてしまいました。  お染が決めた死に場所は蔵の前の井戸。蔵の内と外と隔てられてはいましたが、再会したお染と久松は未来を誓い合い、やがて新年が明けようという頃、それぞれ命を断ったのです。  
   (日本芸術文化振興会発行 第47回、67回=文楽公演 番
  歌祭文とは 
   江戸時代中期ごろ、心中・犯罪などの市井の事件やそのときどきの風俗をいち早く読み込み、三味線などを伴奏に祭文語りによって広く歌われた俗謡の一種を言います。
 各地で流行し、浪花節の前身になったとも言われています。  
   
  『新版歌祭文』ゆかりの地巡り は こちら
  
釣女
解説
   本作は能狂言から移入されました。この種のものとしては『小鍛冶』等が挙げられますが、歌舞伎に作られた常磐津舞踊『釣女』を、さらに文楽化したもので、昭和12年に初演されました。太郎冠者や醜女の動きには、人形独特のものがあります。
                                          (独立行政法人日本芸術文化振興会発行 第107回=平成19年7・8月文楽公演番付より)
聞きかじりメモ
 ずいぶん前、海外公演で「釣女」を上演した折のこと、海外のお客さん方には醜女の首(お福)がとてもチャーミングでかわいく映ったようで、なぜ太郎冠者が嫌がるのか不思議がられたことがあったとか。
   
心中天網島
   解説
    享保5年(1720)10月14日、大阪天満の紙屋治兵衛と曽根崎新地の遊女、紀伊国屋小春が心中した事件を同年12月、近松門左衛門が上中下三巻に纏め竹本座で初演されました。
 近松はこの心中事件を殆ど実説どおりに脚色したようで、このことから人物描写に無理がなく、彼の世話物中の白眉とされており、後に改作された『天網島時雨炬燵』等と共に人気曲として屢屢上演されています。
 なお外題は、善悪それぞれに報いをなす、「天の網」と「網島」をかけたものです。
                                       (独立行政法人日本芸術文化振興会発行 第116回=平成21年10・11月文楽公演番付より)
『心中天網島』ゆかりの地巡り は こちら

文楽 女たちの独白… 
    4月公演の舞台のどこかから、何やら女の声が・・・・・・ (FT)
   
 
首の名前
 役名 かしら名 
 伽羅先代萩
八汐(やしお) 八汐(やしお)
沖の (おきのい) 老女形(ふけおやま)
鶴喜代君 (つるきよぎみ) 男子役(おとここやく) 
千松 (せんまつ) 男子役(おとここやく)
乳人政岡 (めのとまさおか) 老女形(ふけおやま)
小巻 (こまき) 老女形 (ふけおやま)
忍び (しのび) 端敵 (はがたき)
栄御前 (さかえごぜん) 老女形 (ふけおやま)
 新版歌祭文
丁稚久松(でっちひさまつ) 若男(わかおとこ)
娘お染(むすめおそめ) (むすめ) 
娘おみつ(むすめおみつ) (むすめ) 
親久作(おやきゅうさく) 白太夫(しらたゆう) 
下女およし(げじょおよし) お福 (おふく)
油屋お勝(あぶらやおかつ) 老女形(ふけおやま) 
船頭(せんどう) 男つめ(おとこつめ) 
釣女
大名(だいみょう) 検非違使(けんびし)
太郎冠者(たろうかじゃ) 又平(またへい)
美女(びじょ) (めすめ) 
醜女(しこめ) お福(おふく) 
 心中天網島
紀の国屋小春(きのくにやこはる) (むすめ) 
江戸屋太兵衛(えどやたへい) 陀羅助(だらすけ) 
粉屋孫右衛門(えどやまごえもん) 孔明(こうめい)
紙屋治兵衛(かみやじへい)  源太(げんだ) 
河庄亭主(かわしょうていしゅ) 端役(はやく)
女房おさん (にょうぼうおさん) 老女形(ふけおやま)
舅五左衛門 (しゅうとござえもん) (しゅうと) 


 
衣裳
伽羅先代萩
八汐 金茶繻子着付 紺地錦雲立涌打掛(きんちゃじゅすきつけ  こんぢにしきくもたてわくうちかけ)
沖の井 浅葱綸子着付 鉄地錦華丸打掛(あさぎ りんず きつけ  てつぢにしきはなまるうちかけ)
乳人政岡 赤綸子着付 白地唐織華紋打掛(あかりんず きつけ  しろぢからおりかもんうちかけ)
栄御前  白綸子半腰 茶地錦鉄線唐草打掛(しろりんず はんごし  ちゃぢにしきてっせんからくさうちかけ) 
 
 
新版歌祭文
丁稚久松 納戸縮緬伊予染着付(なんどちりめんいよぞめきつけ)
娘お染  黒縮緬花に蝶染振袖着付(くろちりめんはなにちょうぞめふりそできつけ) 
娘おみつ  萌黄紬石持振袖着付もえぎつむぎこくもちふりそできつけ) 
浅縹縮緬たんぽぽ友禅石持振袖着付(あさはなだちりめんたんぽぽゆうぜんこくもちふりそできつけ) 
 
心中天網島
紀の国屋小春 黒縮緬秋草裾模様着付(くろちりめんあきくさすそもようきつけ)
紙屋治兵衛 納戸縮緬小棒縞下衣装付着付(なんどちりめんこぼうじましたいしょうつききつけ) 
女房おさん 納戸縮緬麻の葉小紋着付(なんどちりめんあさのはこもんきつけ) 
資料提供:国立文楽劇場衣裳部

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