瓜子姫とあまんじゃく
解説
 三和会(みつわかい)が当時東京歌舞伎にさかんに民話劇を提供していた木下順二に新作を依頼、2世野澤喜左衞門が作曲し、昭和30(1955)年11月大阪・三越劇場で初演された、珍しい口語体の浄瑠璃です。夏休み公演だけでこれで5演目という人気曲で、5年ぶりの登場です。
 (F.T.)
増補大江山 
 解説
 明治23(1890)年10月東京・歌舞伎座で初演された河竹黙阿弥作の常磐津舞踊「戻橋(もどりばし)恋の角(つの)文字」を、同25(1892)年11月いなり彦六座で『大江山酒呑童子(しゅてんどうじ)』に取り込んだのが人形浄瑠璃で上演された初めと思われます。大正期には独立して景事(けいごと)(舞踊的要素が強い演目)として上演されるようになり、現在の外題(げだい)となりました。今回の上演は5年半ぶり。
 (F.T.)
 卅三間堂棟由来
 解説
 初世若竹笛躬・中村阿契作、宝暦10(1760)年12月豊竹座初演の『祇園女御九重錦(ぎおんにょうごここのえにしき)』の3段目が、文政4(1821)年6月大坂御霊社内で上演された時に現在の外題になりました。
 『祇園女御九重錦』は親鸞(しんらん)上人の弟子平太郎と三十三間堂の棟木の由来を白河法皇の時代に置き換え、平忠盛・祇園女御の話と絡ませ、源義親・太宰帥(だざいのそち)季仲の謀反を仕組んだ全5段の時代物です。3段目は、平忠盛の執権・進ノ蔵人(しんのくらんど)がやってきて三十三間堂の棟木にするための柳の大木の伐採を里人に命ずる「口・熊野山里」、生活のため畑の野菜を盗む横曽根平太郎が倅(せがれ)みどり丸の「お月様が見てじやぞや」ということばに翻心するが盗賊和田四郎(実は源義親の郎党・鹿嶋三郎)に目撃される「奥・熊野山畑」と今回上演の「切の口・平太郎住居」「切の詰・平太郎住居から熊野街道筋(木遣(きや)り音頭)」からなっています。当劇場7回目、またも前回から3年3か月ぶりという早い再登場です。
 (F.T.)
 大塔宮曦鎧
 解説
 初世竹田出雲・松田和吉合作、近松門左衛門添削、全5段の時代物。角書「太平記/綱目」。享保8(1723)年2月竹本座で初演。『太平記』に題材をとり、北条氏討伐を図る後醍醐帝の皇子・大塔宮が苦難の末六波羅を攻略するに至るまでの経緯を主筋に、斎藤太郎左衛門一族の悲劇を絡めて展開させたもの。人形浄瑠璃では明治25(1892)年9月の御霊文楽座を最後に上演が絶えていたのを、国立劇場の文楽古典演目復活準備事業として野澤錦糸師が平成23(2011)年に復曲、2回の素浄瑠璃での試演を経て同25(2013)年12月国立小劇場での復活上演にこぎつけました。実に121年ぶりのこと。今回当劇場でも上演、大阪で言えば126年ぶりとなります。なお、歌舞伎では、今のところ昭和40(1965)年9月歌舞伎座での上演が最後になっています。
 重要場面は初段切「万里小路(までのこうじ)藤房別邸」、2段目切「内裏合戦(だいりかっせん)」、3段目切「永井館奥庭」、4段目切「熊野戸野兵衛館」ですが、かなり早くから、最も優れた場面である「永井館奥庭(身替り音頭)」につながる3段目だけを上演するようになっていたようです。
 内裏合戦で六波羅方が勝利して半年、後醍醐天皇は隠岐島に流され、大塔宮護良(もりよし)親王は行方知れずになっています。六波羅探題・常盤駿河守範貞は後醍醐帝の寵姫・三位(さんみ)の局(阿野廉子)と若宮(恒良(つねよし)親王)を家臣の永井右馬頭(うまのかみ)宣明のもとに預けて監禁し、ほかの宮家や公家たちも死罪・流罪に処するなど、その威勢を恐れぬものがない有様です。
 (F.T)
 新版歌祭文
 解説
 安永9(1780)年9月竹本座で初演された近松半二作、上下2巻の世話物。 宝永(ほうえい)7(1710)年正月6日、大坂・板屋橋南詰にあった油問屋の細工場で、丁稚の久松が主人の娘そめと刃で心中しました。この事件は早くもその月のうちに荻野八重桐(おぎのやえぎり)座で『心中鬼門角(きもんかど)』として劇化上演され、翌正徳(しょうとく)元(1711)年4月には紀海音が浄瑠璃化した『お染久松袂(たもと)の白(しら)しぼり』が初演。少し間をおいた明和4(1767)年12月に北堀江座で初演された菅専助『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)』と本作とが浄瑠璃におけるお染久松物の決定版になっています。  「祭文」は祭りの際の神仏に対する告文で、独特の節がついています。これに同時代の事件や風俗が読み込まれて俗謡となったものが「歌祭文」で、八百屋お七や樽屋おせんに続いてお染久松も事件後すぐに歌祭文になって広まりました。本作はその「新版」というわけです。久松の父親が野崎村の久作だというのは『袂の白しぼり』からの設定ですが、その久松の在所(本作では養家)を舞台にし、「くめ」という名前だけだった久松の許嫁(いいなずけ)を「おみつ」として登場させ、都会の娘でしかも「お嬢様」であるお染と対比させる、という半二お得意の演劇構造となっています。
 (F.T.)
 日本振袖始
 解説
 享保3(1718)年2月竹本座初演、近松門左衛門作、全5段の時代物。はじめ悪人として登場した素盞嗚尊(すさのおのみこと)が、岩長姫と化して現れた八岐大蛇(やまたのおろち)に十握(とつか)の宝剣を奪われたことから悔悟し、あちこちで活躍した後、出雲で八岐大蛇の人身御供になる稲田姫の危難を救い、十握の宝剣を取り戻す、という筋で、近松作品で神代を扱ったものはこれだけです。4段目で素盞嗚尊が稲田姫の熱病を癒すために両袖の下を切り開いて脇明けとし、熱気をはらしますが、これが振袖のはじめだ、というのがそのまま外題になっています。現在文楽で上演されるのは5段目の「大蛇退治」だけで、当劇場には8年ぶりの再登場になります。
 (F.T)
首の名前
 役名 かしら名 
瓜子姫とあまんじゃく
瓜子姫 ねむりの娘
じっさ 白太夫
ばっさ
杣の権六 斧右衛門
山父 山父
あまんじゃく 舌出し
角出しのガブ
   
 増補大江山
渡辺綱  文七 
右源太 陀羅助
左源太 検非違使
若菜 角出しのガブ
鬼女
  
卅三間堂棟由来 
女房お柳 老女方
進ノ蔵人 孔明
平太郎の母
横曾根平太郎  検非違使
和田四郎 大団七
みどり丸 男子役
大塔宮曦鎧 
常盤駿河守範貞 口あき文七
小姓 男子役
斎藤太郎左衛門利行 鬼一
口あきの鬼一
妻花園 老女方
若宮 男子役
三位の局 老女方
永井右馬頭宜明 孔明
鶴千代 男子役
力若丸 男子役
新版歌祭文 
娘おみつ 
祭文売り 端役
親久作 白太夫
久三の小助 手代
丁稚久松 若男
娘お染
下女およし お福
駕籠屋 男つめ
油屋お勝 老女方
船頭 男つめ
日本振袖始 
稲田姫
武氏
岩長姫 角出しのガブ
般若
素戔嗚尊 文七
 










 
衣裳
増補大江山
若菜  藤色綸子秋草染繍肩切り(ふじいろりんずあきくさそめぬいかたきり)
鼡羽二重稲妻雲染箔肩切り裏付半腰(ねずみはぶたえいなづまくもそめはくかたきりうらつきはんごし)

卅三間堂棟由来
女房お柳 1 草色紬石持着付(くさいろつむぎこくもちきつけ)
2 白羽二重枝垂柳染着付(しろはぶたえしだれやなぎそめきつけ)
大塔宮曦鎧
斎藤太郎左衛門利行   茶地唐織華紋大寸半腰(ちゃじからおりかもんだいすんはんごし)
黒繻子大紋(くろしゅすだいもん)
革色錦雲龍半腰(かわいろにしきうんりゅうはんごし)
焦茶繻子半素袍(こげちゃじゅすはんずおう)
新版歌祭文
娘お染  紫縮緬薬玉友禅振袖着付(むらさきちりめんくすだまゆうぜんふりそできつけ)
日本振袖始
岩長姫  黒羽二重鱗金銀箔摺振袖着付(くろはぶたえうろこきんぎんはくずりふりそできつけ)
 



資料提供:国立文楽劇場文楽技術室衣裳担当
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